超小型衛星の熱設計方法の研究 |
大きさ 50 cm × 50 cm × 50 cm以下、質量 50 kg以下の衛星や探査機を超小型衛星や超小型探査機と呼びます。超小型衛星や超小型探査機は、これまで数多く製作されてきた中・大型衛星や探査機に比べて、小型のため熱容量が小さく、温度変化しやすいため、熱設計しにくい特徴を持ちます。一方、超小型衛星や超小型探査機は、低コストで、受注から打ち上げまで2年程度にするという短期開発を期待されています。熱設計しにくいものを従来より大幅な短期間で熱設計する必要があり、従来とは異なる熱設計法が必要とされています。そこで、短期開発を実現し、かつ信頼性を損なわない熱設計法として、少節点解析と多節点解析を組合せた熱設計方法の開発を行っています。 |
放射エネルギーの波長制御 |
従来の放射加熱式乾燥炉では、エミッターが全波長域で放射し、フィルターで溶剤の吸収帯のみ放射を通過させていました。溶剤の吸収帯以外の放射は被加熱物に到達しないため、大きな熱損失が発生していました。蒸発させる溶剤の吸収波長帯で放射するエミッターを開発できれば、フィルターが不要になり、エミッターに投入する電力を低減できると考え、放射する波長制御技術に金属-絶縁体-金属からなるメタマテリアル構造(MIM構造)を用いたエミッターを開発しました。ある特定の波長域のみ放射率を高くすることに成功しました. |
スマート流体に関する研究 |
界面活性剤を入れた水の乱流抵抗が著しく低減する機構(トムズ効果)を理論的に調べ、最適な抵抗低減手法を開発しています。乱流現象の制御、特に壁面摩擦抵抗の低減は、工学上重要な課題の1つです。その中でも、水に微量の長鎖状高分子あるいは棒状ミセルを形成する界面活性剤を添加すると、乱流域での抵抗が著しく低減することはToms効果として古くから知られています。近年では、ポンプなどの機器を通過中に破断されても再生可能な界面活性剤ミセルの特性を利用して熱供給システムの動力を低減させる等の実用化に向けた研究がなされています。しかしながら、抵抗低減のメカニズムについては未だ不明で、現象を定量的に予想しえる理論やモデルも存在しません。本研究では、独自のモデルを考案し、それを用いた乱流の直接数値計算(DNS)によって、抵抗低減現象が再現されることを示し、抵抗低減の定量予測が可能なモデルの構築を目指すと同時に、計算結果を用いて抵抗低減のメカニズムに関する考察を行っています。また、それらの知見を基に新たな抵抗低減手法を見出すことを目的としています。 |
液滴の衝突現象の解析 |
液滴の衝突は,内燃機関やボイラ中の燃料噴霧、インクジェットプリンタ、液滴ラジエータなどさまざまなスプレー過程や雨滴形成などの研究や機器開発において大変興味深い現象です。一方、衝突後の液滴の結合や分離あるいは変形のメカニズムを知ることは、実験ではきわめて困難です。当研究室では気液2相流の数値計算プログラムを作成し、液滴同士の衝突や液滴と固体壁の衝突現象の解析を行っています。現時点ではこれらの定性的挙動の再現は行うことはできており、その定量的精度の検証を行っているところです。なお、本プログラムは液滴に限らず種々の気液2相流の計算を行うことができ,将来的には解析の対象を広げる予定です。 |
翼型伝熱管周りの流れと伝熱 |
伝熱管を翼型にすることによって,伝熱菅後部の剥離を抑制することができ,このことによって,圧力損失が低下すると同時に有効伝熱面積が増加する,すなわち流動損失の低下と熱伝達量の増加を実現することが期待されます. |
氷スラリーの融解促進法の開発 |
氷スラリーは、微細な氷粒子と液体(主に水もしくは水溶液)の固液二相流体で、氷の融解潜熱により高い蓄熱密度を有することから冷熱媒体として注目されています。しかし氷スラリーの潜熱は、流れ中の氷粒子の偏在などにより、伝熱面で十分に採熱されない場合が多く、熱伝達率の向上の余地があります。本研究では、加熱面近傍での氷の粒子の融解伝熱促進を目的として、伝熱面に氷粒子を高頻度で接触させる方法を検討しています。そのため、図6に示すように、迎角付放熱フィンを管路に配置し、氷スラリーの氷充填率、流入速度が融解熱伝達特性に及ぼす影響について検討を行っています。 |
低温におけるタンパク質と結合水の状態に関する生体分子シミュレーション |
ヒトの筋肉を構成する重要な蛋白質の一つ、コラーゲンが周囲の水分子とともに低温(-50 ℃)にさらされた場合のコラーゲンの構造の変化(変性)について、シミュレーションを行っています。シミュレーションの結果から、コラーゲンに結合した水分子が低温において構造化することで、常温のコラーゲンの結合に影響し、その構造をゆがめているのがわかります。この低温の状態から急激に昇温すると、コラーゲンの結合が破壊されて、常温に戻ってもコラーゲン分子は復元しません。実際に、凍結させた食用の肉を沸騰している湯に急入れると、肉が分解して形状を保たないことに対応しています。これは、水分を含む生体組織を低温で保存するための基礎的な研究です。 |